遺留分とは

遺留分とは相続人の保護、生活の保障のために定められた最低限の相続分のことをいいます。

例えば、
被相続人(亡くなった方)が他の相続人に遺産をすべて相続させる遺言をのこしていた場合や、
被相続人が生前に財産を他の相続人に譲っていたケースなどでは、
自分も相続人であるにも関わらず遺産を取得できないことが起こりえます

そのような場合に主張できるのが「遺留分」です。

遺留分を請求できる人

遺留分は相続人であれば誰でも請求できるわけではありません
すなわち遺留分は無制限に認められているものではないのです。

民法において遺留分が認められているのは「兄弟姉妹以外の法定相続人」です。

兄弟姉妹以外の法定相続人とは

  • 配偶者
  • 直系卑属(子や孫など)
  • 直系尊属(親や祖父母など)

のことをいい、法律で定めれた順位に従い、
自らが法定相続人となっている場合に遺留分を請求する権利を有します

遺留分の請求権利があるのは
被相続人の「兄弟姉妹以外」で

遺留分を請求する権利

法律で定めれた順位により
自らが法定相続人となっている人

法定相続人や相続の順位について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください 法定相続人

また兄弟姉妹には遺留分が認められていないことから、
兄弟姉妹に代襲相続が発生して甥や姪が相続人になった場合でも、その甥姪には同様に遺留分は認められません。

遺留分を請求できない人

遺留分を請求できない人は、次のとおりです。

● 兄弟姉妹

前述したとおりです。

● 相続放棄をした者

たとえ兄弟姉妹以外の法定相続人であっても
相続放棄をした者は遺留分を請求することはできません。

相続放棄について詳しく知りたい方はこちら 相続放棄

● 相続欠格に該当する者

相続欠格とは、ある一定の事由により、その者の相続人としての地位を奪う制度のことです。
民法では次の者が相続欠格者に当たるとされています。

民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。

1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

つまり、被相続人や先順位、同順位の相続人を殺害したり、遺言書の偽造や変造詐欺や脅迫によって遺言者の真意によらない遺言書を作成させたような場合、その者は相続欠格者となり、相続権を失います。

相続欠格者となった者には遺留分を請求する権利は認められません。

● 相続廃除された者

廃除とは、虐待や侮辱など著しい非行があった者の相続人としての相続権を奪う制度のことです。

民法892条
遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

廃除は被相続人が生前に自身で家庭裁判所に請求して行うか、
被相続人の遺言によって行う必要があります。

相続廃除された者には遺留分を請求する権利は認められません。

遺留分の割合

遺留分の割合は、
直系尊属のみが法定相続人の場合は遺産の3分の1
それ以外の場合は遺産の2分の1となります。

<配偶者と子(直系卑属)が法定相続人の場合>

配偶者と子(直系卑属)が法定相続人の場合の遺留分の割合

「直系尊属のみが法定相続人」のケースではないので、遺留分の割合は2分の1です。

さらに個別の遺留分は各法定相続分を乗じた割合になるので上記の図のような結果になります。

<配偶者と親(直系尊属)が法定相続人の場合>

配偶者と親(直系尊属)が法定相続人の場合の遺留分の割合

「直系尊属のみが法定相続人」のケースではないので、遺留分の割合は2分の1です。

さらに個別の遺留分は各法定相続分を乗じた割合になるので上記の図のような結果になります。

<直系尊属のみが法定相続人の場合>

配偶者と親(直系尊属)が法定相続人の場合の遺留分の割合

「直系尊属のみが法定相続人」のケースに該当するので、遺留分の割合は3分の1です。

さらに個別の遺留分は各法定相続分を乗じた割合になるので上記の図のような結果になります。

<配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合>

配偶者と兄弟姉妹が法定相続人の場合の遺留分の割合

「直系尊属のみが法定相続人」のケースに該当しないので、遺留分の割合は2分の1です。

兄弟姉妹には遺留分はないので、配偶者の遺留分の割合は2分の1となります。

まとめると、遺留分の割合は下記の図のようになります。

遺留分のまとめ

遺留分を請求することができる期限

遺留分は請求できる期限は2つあります。

相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間

被相続人が亡くなったことだけでなく、自己の遺留分が侵害されたことをも知ったときから時効が進行し、そこから1年経過すると遺留分を請求できなくなります。

相続開始の時から十年を経過したとき

被相続人が亡くなってから10年経過すれば遺留分を請求できなくなります。
これは「除斥期間」といい、請求者が相続開始の事実を知らなかったとしても自動的に進行します。

民法改正による変更点

2019年の民法改正に伴い、遺留分に関する規定も変更となりました。

遺留分の請求権が金銭債権となった

従来までは遺留分権利者は全ての遺産に対し、遺留分の請求を行うことができました。
そのため不動産や株などを対象として遺留分を請求されると、請求者と請求を受ける者の共有状態となり、その後の財産の処分を巡ってトラブルに発展することもあったのです。

しかし今回の民法改正によって、遺留分の請求権は金銭債権として一本化されることになりました。

その結果、請求を受けた者は金銭で支払うことで足り、遺産の共有状態は免れるので紛争の種を生み出すことの防止につながります。

そして金銭債権となったことで従前は「遺留分減殺請求権」と呼ばれていた請求権が「遺留分侵害額請求」へと名称が変更となりました。

法定相続人に対してされた生前贈与への請求は相続開始前10年に限定された

遺留分侵害額請求は被相続人が生前に行った贈与も対象となります。
今までは遺留分の請求に対する生前の贈与に時期的な規制はなく、数十年前にされた贈与に対しても有効でしたが、今回の法改正で「法定相続人」に対してされた生前贈与は相続開始前10年にされたものに限定されました。

ポイントとしては「法定相続人」に対した生前贈与の規定の変更であり、相続人以外の者にされた贈与については、従前どおり相続開始前1年にされたものにつき請求できるに留まります。

①、②ともに、2019年7月1日の民法改正後に発生した相続が「遺留分侵害額請求」の対象となる点につき注意が必要です。
2019年6月30日までに発生した相続については従来までの「遺留分減殺請求」が適用されます。


遺留分についてのFAQ

遺留分について当事務所にいただく
よくある質問にお答えいたします。

Q.

遺留分はどのように請求すれば良いですか?

A.

遺留分は相手方に対する意思表示によって行います。
請求権の時効にかからないようにするためにも、通常は内容証明郵便などによって通知します。

Q.

遺留分は必ず請求しなくてはいけないものなのですか?

A.

遺留分を請求するかどうかは各相続人の判断に委ねられるため、
必ず請求しなくてはいけないものではありません。

Q.

遺留分を放棄したいのですが、どうすれば良いですか?

A.

被相続人の生前に遺留分を放棄するには家庭裁判所の許可が必要です。
これに対し、被相続人の死後に遺留分を放棄するには特段の手続きは不要です。

Q.

内縁の妻や夫は遺留分を請求できますか?

A.

できません。内縁の妻や夫には遺留分が認められていません。

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